妊娠時の口腔ケアと子供の虫歯の因果関係

最近のお母さんはお子さんの虫歯予防に大変関心を持っておられます。

一つには初めてのお子様なら尚の事、その子の成長に合わせて前歯から順番に乳歯が萌出するのを、順を追って実際に見る事ができるからでしょうし、お子様の健康を第1に考えているお母様にとって、乳歯が「食べる」という最も健康に重要な部分に直結しているからでしょうし、他の体の部分と違ってお母様の努力次第である程度虫歯予防ができるからでしょうし、加えて母乳(人工乳)・離乳食・普通食とお子様の成長に合わせた食事の変化が歯の生え方に重なっているからでしょう。

お母さんたちのお子様の健康に対する努力は本当に頭の下がる次第です。

ところが皆さんが、皆さん同じように努力しているにも関わらず、ある子は虫歯が全くなく成長し、ある子供はどんなに頑張っても虫歯ができてしまいます。

その事でお母さんからよく質問を受けるのですが、今回と次回を掛けて何故お子様によって虫歯のできやすい子とできにくい子がいるのかをお話しさせていただこうと思います。

今回はその前半、表題の通り『妊娠時の口腔ケアと子供の虫歯の因果関係』についてです。

 

以前小児歯科学会の論文に記載された実験が有ります。はっきりとした人数は忘れましたが、数十人の妊婦さんに協力していただき、ある実験をしました。妊娠時から出産まで徹底した歯磨き指導と口腔ケアをした結果、妊娠中にしっかりとブラッシングと口腔ケアをなさった方は、優位性を持って(優位性とは、たまたまその時だけ数値がよかったとか偶然ではなくという意味です)ブラッシングのできなかったグループに比べて、生まれた子供たちに虫歯の発生が減った、という実験及び統計が発表されました。

これに付いて考えてみましょう。

 

生まれたばかりの子供たちに口の中には虫歯菌や歯槽膿漏菌は存在しません。

じゃあどこで赤ん坊は菌に感染するのでしょうか?

実は初めての乳歯の萌出と共に、お乳から離乳食へと食事が変わるとき、母親から感染するのです。

虫歯菌にも色々な種類が有りますし、同じ種類の中にも元気な菌、弱い菌が有ります。お母さんから感染した菌がもしもかなり元気な強い菌だったら、子供は虫歯予防をする前から、リスクを抱える事になります。

しかし、もしもお母さんのお口の中の菌が弱い菌だったら、おのずと子供に感染する菌は弱い菌になるのです。

その結果として弱い菌に感染した子供たちは、虫歯になりにくかったという訳です。もちろん妊娠中に歯ブラシをしっかりできるお母さんは、お子さんの口腔管理もしっかりとできると思われる訳ですから、その点は考慮しなければなりませんが、それを差し引いた上での優位性です。

アメリカの学会では今もそうかもしれませんが、母親からの感染を防ぐ為に、徹底して注意をし、同じスプーンは使わない、母親は手を消毒するなどの指導をするようですし、その影響を受けた日本の歯科医が、患者さんに同じような指導をしているのを聞いた事が有りますが、はっきり言ってそれは間違っています。

虫歯菌は唾液の飛沫によって飛びますし、テーブルなどに付いても長期にわたり生きています。1歳前後の幼児は自分の指はもちろんの事、清潔不潔関係なく、あらゆる物をなめたり噛んだりします。さてお母さんが努力した所で、感染を防ぐ事など出来るでしょうか。それどころかとても元気な虫歯菌に感染する可能性が高くなるのではないでしょうか。

それだったら弱った母親の菌を感染させるべきでしょう。感染予防に力を注ぐより、お母さんが自分の口腔ケアをしっかり行って、口腔内常在菌を弱らせておきましょう。

 

 

次回は子供が出来てからの虫歯予防のお話です。

 

 

坪内歯科医院

〒659−0064

 

芦屋市精道町6−10

芦屋ガーデンハイツ1階

 

阪神芦屋駅、徒歩3分

 

 

ご予約、ご相談はこちらまで

 

0797ー22ー1712